安保法制(戦争法)施行後の自衛隊

2018年1月12日 九条の会練馬連絡会 報告
大内 要三(日本ジャーナリスト会議会員、ねりま九条の会世話人)

防衛大学校卒業式恒例の「帽子投げ」

1.防衛予算に見る外征化する自衛隊
2. 演習の実戦化・日米一体化
3.安保法制(戦争法)の施行状況
4.自衛隊の任務を正しく認識する
5.この自衛隊を憲法で認知して良いか

安保法制(戦争法)施行後の自衛隊

2018年1月12日 九条の会練馬連絡会 報告
大内 要三(日本ジャーナリスト会議会員、ねりま九条の会世話人)

安倍改憲を許さない、3000万署名に取り組んでいる9条の会のみなさんに、「この自衛隊を平和憲法で認知していいのか」というテーマに絞って、今日はお話をいたします。時間の制約から、改憲をめぐる情勢、朝鮮問題、安保条約などについては触れないことをご了解ください。

1.防衛予算に見る外征化する自衛隊

 昨年暮れ、12月22日に2018年度予算案が閣議決定されました。うち防衛費は5兆1911億円と過去最大の規模になりました。防衛省が発表した『我が国の防衛と予算』という60頁を超える報告書に、その明細が書かれています。
 まず新たに買い込む武器のうち目立つものを見ますと、5年計画の中期防衛力整備計画の5年目でもあり、1000億円を超えるような大きな買い物はありません。最新鋭高性能な武器をそろえるわけですが、専守防衛(国を守ることに専念する)のためでなく外征(外国に攻めていく)に役立つ武器、それも米国製の武器が目立ちます。
 F35-Aステルス戦闘機を6機(昨年も6機)。オスプレイを4機(昨年も4機)、佐賀に配備する予定が反対運動で実現していません。KC-46A空中給油機を3機、戦闘機が給油のため地上に降りずに飛び続けられます。E-2D早期警戒機を1機。ここまでは全部、米国製です。
 C2輸送機を2機、航続距離9800キロですから太平洋を横断できます。護衛艦2隻、海上自衛隊は艦数は増やさずに大型化しています。潜水艦1隻、これで22隻体制になります。10式戦車5両、戦車は狭い山国の日本では使い勝手の悪い武器で、重量が44トトンありますから渡れない橋も多く、輸送機で運ぶこともできません。代わりに16式機動戦闘車18両、これは輸送機で運べます。キャタピラでなく強化タイヤで走ります。

 昨年11月に米国のトランプ大統領が来日して安倍首相とゴルフをしたりしていました。安倍首相は朝鮮危機をさかんにあおりましたけれども、経済人のトランプ氏はもっぱら武器売り込みをして、決まったのはイージス・アショアの導入です。12月19日に導入の閣議決定がありました。イージス・アショアはイージス艦と同じシステムを地上に設置するもので、イージス艦などと連動して敵ミサイルの飛来を察知、迎撃します。1機1000億円、18年度予算に設計費7億円が計上されました。秋田の陸上自衛隊新屋演習場、山口県萩市のむつみ演習場に設置が予定されています。朝鮮ミサイルの早期補足・迎撃と宣伝されていますが、韓国、ロシア、中国も監視することになります。
 また、敵基地攻撃用ミサイがル導入されます。とりあえず18年度予算に調査費3000万円。昨年3月に自民党安全保障調査会が作成した「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」に従ったわけですが、この提言をまとめた座長は小野寺五典氏、現防衛大臣でもあります。小野寺防衛相は、敵基地攻撃能力でなく敵基地反撃能力=第二撃を防止のためと説明しています。戦闘機に乗せて遠くから、つまり外国の領土・領海に入らずに攻撃できる巡航ミサイルです。巡航ミサイルは地形を読み取りながらレーダーに関知されない低空を飛行します。米国のトマホークが有名ですがすでに生産中止。射程500キロのノルウェー製を想定すると防衛相は言っていますが、射程1000キロの米国製JASSMになる可能性が高いのではないでしょうか。
 米国から武器を買う場合、多くはFMS契約(対外有償軍事援助)です。政府間取引で、前払いですが納入時まで正確な値段が分からない、その納入時期も米国側が決める、という買い物です。しかも米国製の新鋭武器の肝心な部分はブラックボックスで日本の工場では触れません。バージョンアップも米国まで運んで行う場合があります。水陸両用車SSV7のように、国産でより高性能のものが作れるのにわざわざ米国から買い込んだものもありますが、これは日米共同作戦つまり米軍と自衛隊がともに戦うには、同じ武器を使うのが合理的だからです。
 高額の武器をなぜ次々と買えるのか。後年度負担というマジックがあります。5年先までの分割払いなのです。防衛予算5兆2000億円は、ほぼ3分の1ずつ3分野に分けられます。防衛関係費=人件・糧食費、一般物件費(事業費)=装備調達、整備、訓練、施設、研究開発、基地対策費、そして歳出化経費=後年度負担(過去の契約による支出)。すでに契約済みの武器調達のために防衛予算の3分の1が使われる。年ごとに防衛予算が増えていくのも当然です。

 ここまでは新たな武器調達のお話です。他にも防衛省・自衛隊で進行中の目立った計画はいくつもあります。
 日本版の海兵隊、水陸機動団を編成します。これまでは敵が攻めてくるまで出番のなかったはずの陸上自衛隊に、米軍の海兵隊と同様な、積極的に外に出て行く殴り込み部隊を作ります。すでに2014年から佐世保市相浦の西部方面普通科連隊が米海兵隊と共同訓練を繰り返していましたが、これを母体につくる約3000名の部隊です。準備隊編成完結式は2015年3月26日に行われました。上陸作戦用に水陸両用車とオスプレイを導入し、これに合わせて輸送艦も改修しています。3個連隊の1は沖縄のキャンプ・ハンセンに置かれる計画です。水陸機動団は陸上総隊に直属しますが、朝霞基地に本部が新設される陸上総隊は、5方面隊に指揮権が分かれていた陸上自衛隊部隊を統轄するものです。
 南西地方に自衛隊基地新設を進めています。これまで米軍も自衛隊もいなかった(宮古に自衛隊のレーダー基地のみ)奄美、宮古、石垣、与那国に自衛隊が駐屯します。18年度予算に計上する予定だった新基地建設費2345億円は、前倒しで17年度補正予算に組み込まれました。国境の島、与那国は人口1500の島ですが、すでに16年7月に自衛隊が進駐し、人口1700超になりました。離島防衛を名目としていますが、南西地方防衛力強化は米軍の穴埋めであって、中国軍の太平洋進出をチェックし、より大きな事態に米軍とともに対処するためです。
 海上自衛隊でも最大の護衛艦「いずも」を航空母艦に改造する計画が検討に入りました。国際的には「軽空母」と呼ばれるヘリ搭載型護衛艦で、全長248m、基準排水量19500トン、14機のヘリコプターを載せることができます。形は航空母艦型ですが戦闘機の離発着能力はないので、甲板を強化し、前部をスキージャンプ型に改造し、垂直離発着の戦闘機F35-Bを搭載する計画があると、昨年暮れに報道されました。防衛相は記者会見で「具体的な検討は現在行っていない」と言っていますが、「様々な検討は必要」とも言っています。航空母艦は爆撃機や大陸間弾道弾と同様に誰が見ても外国まで出かけて戦闘をするための武器ですから、これまで政府は「持てない」と国会答弁をしてきました。
 新自衛隊病院を建設します。自衛隊にはいま中央病院と地区病院が15ありますが、埼玉県入間に航空自衛隊の新病院をつくります。ここは旧陸軍航空士官学校があったところで、戦後は米軍基地になり、1978年に返還後は自衛隊が使用しています。ただし米軍住宅跡地は未利用で入間市は公園計画を持っていました。防衛省はここに19年度完成をめざす新病院をつくる計画です。新病院はPTSD(心的外傷後ストレス障害)などメンタルヘルス対策に力を入れ、すでに入間基地では負傷者搬送訓練も行われていますので、野戦病院化する可能性があります。
 戦場での救急態勢も強化します。「第一線救護」と言いますが、戦場での緊急医療体制が兵の生存率を劇的に高めるという米国での研究結果から、防衛省では2013年12月から「衛生機能の強化に関する委員会」を設置していました。医師でなくとも外科的気道確保・胸腔穿刺ができる第一線救命隊員の養成が進んでいます。戦闘で重傷者が続出することを想定しているわけです。また兵の携行する個人衛生救急品は、国内用は包帯と止血剤だけですが、米軍なみに充実させる計画もあります。
 以上、海外で戦争する自衛隊、米軍を助け中国軍に対応する自衛隊の姿が、防衛予算上からも見えてきます。

2. 演習の実戦化・日米一体化

 つぎに最近の自衛隊の訓練・演習の姿を見ます。  1982年から日米共同の「ヤマサクラ」演習が行われています。米陸軍と陸上自衛隊の指揮所演習ですから実際に兵が出動するのではなく、図上演習です。2016年11月に行われたこの演習では、宮古島での戦闘が想定されていました。宮古島・伊良部島・下地島は橋で結ばれていますが、下地島にはすでにほとんど使われていない、本来は民間のパイロット訓練場だった大きな空港があります。これを軍事利用する予定があるため、全長3540メートルの伊良部大橋が2015年に開通しました。
 最大規模の日米合同演習は「キーン・ソード」です。隔年に実施される実動演習ですが、直近では2017年10月30日から11月11日まで、自衛隊25,000名、米軍11,000名が参加しました。大演習ですが詳細は不明で、実施地域は防衛省発表でも在日米軍発表でも「我が国周辺海空域、自衛隊基地、在日米軍基地、グアム、テニアン」と漠然としています。わずかに報道されたのは、沖縄の浮原島での捜索救助訓練でした。撃墜され操縦席から脱出した戦闘機のパイロットを洋上で見つけ救助する想定です。この間、武器使用可で、いったん出動すると周囲で戦闘行為があっても退避しません。訓練では自衛隊と米軍が同じヘリコプターに乗り込んだり、一緒に担架を運ぶ姿が見られました。この捜索救助訓練は、「キーン・ソード」演習のごく一部です。なおグアムとテニアンでも実施したのは、2014年5月のグアム協定(普天間基地移転の代償に日本の費用で米軍グアム基地を整備する約束)改定のとき、グアムとテニアンを日米共同使用基地にすることが決まったからです。
 実動演習「キーン・ソード」は指揮所演習「キーン・エッジ」と交互に実施されています。指揮所演習はコンピューターでハワイ(米太平洋軍司令部)・横田(在日米軍司令部)・市ヶ谷(防衛省)ほかを結んで画面の情報でやりとりする演習ですから、部外者が見ても何をしているのか分かりません。日本の関係省庁も参加します。キーン・ソードとキーン・エッジはともに日米共同作戦計画を練り上げるために行われるものです。日本有事の作戦計画OPLAN5025や、朝鮮有事対処の作戦計画OPLAN5015などがあります。
 自衛隊独自の大演習も、指揮所演習と実動演習が交互に行われています。昨年11月に行われた自衛隊統合実動演習では、 沼津・種子島・対馬、「我が国周辺海空域」で15.000人、車両1500両、自衛艦6隻、航空機170機が参加、中央病院も参加しました。島嶼防衛・上陸作戦の演習を行ったと発表されています。
 日米間だけでなく、より多国籍な訓練も行われるようになりました。昨年4月29日にフランス海軍の強襲揚陸艦ミストラルが佐世保に入港、日英米の兵を載せグアムへ向かい、総勢700人、4カ国共同の島嶼防衛・統合運用の訓練をしました。フランスはインド洋にレユニオン島を、南太平洋にニューカレドニアを領有していますから、ここまで軍艦を派遣するのです。
 多国籍の海軍共同演習では「リムパック」(環太平洋共同演習)が有名です。隔年に実施され、これまで自衛隊のイージス艦と潜水艦は米空母戦闘群に組み込まれて、空母護衛の任務を行う想定で参加したりしてきました。意外に思われるかもしれませんが、航空母艦は敵の攻撃から自身を守る能力が低いのですね。なおリムパックの報道写真ではきれいに並んで艦隊行動をしていますが、これは記念写真撮影用に並んだところで、実戦では互いに肉眼で見えるかどうかくらいに散開して行動します。
 毎年実施される「コープノース」は、グアムでの航空自衛隊と米空軍の共同演習です。ここでは自衛隊の戦闘機が地上に500ポンド爆弾を投下します。もちろん国内ではできない演習です。これも毎年実施される「レッドフラッグ」は、米空軍が主催する多国籍演習です。アラスカで行われ、航空自衛隊の戦闘機が空中給油をしながら現地に向かいます。戦闘機は遠くまでは飛べないので、途中で給油する必要があるわけです。この演習では敵軍戦闘機の役割をするアグレッサー部隊を相手に模擬弾を使って空中戦訓練をします。
 以上、主な共同演習の姿をご紹介してきました。自衛隊と米軍が一体となって実戦的な演習をしています。このような形になってきたのは自衛隊イラク派兵あたりからですが、公然と行われるようになったのは安保法制(戦争法)施行後です。なぜかといえば、当然、法的根拠がないためこれまではできなかったからですが、もうひとつ、自衛隊が米軍と肩を並べて戦えるだけの実力をつけてきた、ということが大きいです。

3.安保法制(戦争法)の施行状況

 もう2年あまり前のことになるのですね。2015年9月19日、国会で安保法制(戦争法)が可決成立しました。国会前の反対集会や地元での学習会に足を運ばれた方も多いことでしょう。そして2016年3月29日、この法律は施行されました。自衛隊の新しい任務がどのように実施されているかを、つぎにお話しいたします。
 まず、スケジュールが法成立以前からできていたことが問題です。国会審議中の2015年8月11日、共産党の小池晃議員が暴露した統合幕僚監部作成の内部文書があります。安保法制成立以前に、防衛大臣の指示で、自衛隊幹部にテレビ会議で、日米ガイドラインと安保法制で与えられる新任務を解説したものです。末尾にスケジュール表がありました。南スーダン派遣部隊の新任務訓練、南シナ海・東シナ海で米軍とともに警戒監視活動をする準備、などが書かれています。このスケジュールが、やや遅れ気味ではありますが、着々と実施されているわけです。
 報道では、最初に安保法制が適用されるのは南スーダンPKO部隊だと言われていました。自衛隊がこのPKO(国連南スーダン共和国ミッション)に参加したのは2012年1月、以後は半年交替で施設部隊が11次にわたって派遣されました。このなかで16年7月に首都ジュバで大規模な内戦が起き、現地部隊は「戦闘」と明記した報告書を防衛省に届けていましたが、防衛省はこれを隠蔽、戦闘に巻き込まれる恐れがあれば撤退するという原則を無視しました。16年10月に稲田防衛相が7時間だけ現地を視察して「安全」を確認、11月の閣議で第11次隊に「駆け付け警護」など新任務を与えました。ところが昨年3月には、やはり犠牲者が出ると国政選挙に影響すると思ったのでしょうか、閣議で撤退を決定しました。5年5ヶ月で約4000人の施設部隊が参加、ただし司令部要員は別枠で、現在も駐在しています。
 幸いに南スーダンで自衛隊は加害も被害もなしに済みましたが、昨年3月にはジュバ市内の交差点で民間車両との衝突事故がありました。国連憲兵の現場検証で自衛隊側に過失なしとされましたが、PKO参加部隊は国連と現地政府との間の地位協定で守られていることを証明したような事件でした。
 アフリカではもう1カ所、これは現在でも自衛隊が駐在しているところがあります。海賊対処のジブチ基地です。2011年に自衛隊はジブチ共和国に基地を建設し、陸海空部隊約180人がいます。近年では海賊はほとんど出現しないので、日本から派遣する護衛艦も2隻体制から1隻体制に縮小しましたが、自衛隊はこの基地を広げる契約もしました。自衛隊・米軍間ではすでに米中央軍(中東担当)、米アフリカ軍と協力する協議が行われていますので、自衛隊は米軍の名代としてアフリカに止まるのでしょう。
 なおここでは、地位協定の問題があります。日本政府とジブチ共和国政府との間に結ばれた地位協定で、駐在する自衛隊員が事件を起こしたときの裁判権を日本側が持ちます。日米地位協定上の差別を日本が見習っていることになります。この差別意識は、ジブチ基地労働者の組合運動を自衛隊が装甲車・銃で威嚇・弾圧した事件にもつながりました。
 安保法制が実施された最初の例は、米艦防護になりました。自衛隊法改正で米軍の「武器防護」として加わった任務です。昨年5月、横須賀を出港した米海軍の補給艦「リチャード・E・バード」を、朝鮮ミサイルで攻撃される恐れがあるというので、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」が九州南方海上まで並航して防護したのです。米艦が攻撃を受ければともに戦うことになります。しかしこの米補給艦は「いずも」と分かれた後は佐世保に寄港し、それから日本海に入って演習中の米空母打撃群に弾薬等を補給しました。より危険な日本海までは自衛艦はガードせず、安全な太平洋だけで「防護」の実績をつくったのです。
 では分かれたあとの「いずも」はどうしたのか。南シナ海に行き、米海軍と「共同巡航訓練」をしました。共同パトロールですから、米海軍の「航行の自由作戦」への参加のようなものです。そして日米ガイドラインに書かれ、先ほど述べた統合幕僚監部作成の内部文書に書かれていた、共同警戒監視行動そのものになります。この「いずも」のケース以外にも、日米の共同巡航訓練は東シナ海・南シナ海で頻繁に行われています。
 安保法制で自衛隊に与えられた新任務のひとつに、在外邦人保護があります。自衛隊法改正で「輸送」だけでなく「救出」任務が加わったのです。輸送の実績としては、2016年ダッカのテロ事件のあと遺体と家族を運んだ例、同じ16年に南スーダンから大使館員をジブチに退避させた例があります。「救出」の実例はまだありませんが、16年12月には市ヶ谷・相馬原・入間・相模湾を結んで「在外邦人保護措置訓練」が実施されました。邦人集合場所が暴徒に囲まれた場合、輸送経路がバリケードで通行妨害にあった場合が想定されました。同様な訓練は17年2月、タイでの多国籍演習「コブラゴールド」の一環としても実施されています。
 このように自衛隊と米軍が協力して行動する場合、必ず日米の「同盟調整メカニズム」(統一司令部)が使われます。2015年の第3次日米ガイドラインで設置が決まったもので、平時から有事にいたる全段階(大規模災害対処を含む)で、米軍と自衛隊が日常的に協議するシステムです。この同盟調整メカニズムに基づく実動稼働の最初の例とされるのが、2016年4月の熊本地震救援に米軍オスプレイが参加したことです。このときは沖縄にいるオスプレイが出動した後になって安倍首相が米軍が救援に来ることを知らされるという、自衛隊・米軍間協議のほうが日本政府に先立つ「先軍政治」になりました。

4.自衛隊の任務を正しく認識する

 自衛隊はどのような仕事をするところか。『防衛白書』などでは国の防衛、災害派遣等、国際協力、が3大任務のように書いてありますが、ほんらいの自衛隊法3条「自衛隊の任務」の規定は違います。国防と治安維持が「主たる任務」で、この任務遂行に支障を生じない範囲で重要影響事態、国際平和活動に従事する。その他はすべて「従たる任務」です。
 この間、自衛隊の好感度がアップしているのは、やはり東日本大震災での自衛隊の活躍ぶりからだろうと思います。内閣府大臣官房政府広報室の自衛隊・防衛問題に関する世論調査(2015年1月)はかなり信頼度の高い調査ですが、その結果を見ますと、
        自衛隊に良い印象を持っている        41.4%
     どちらかといえば良い印象を持っている        50.8%
どちらかといえば悪い印象を持っている          4.1%
悪い印象を持っている              0.7%
という数字でした。これは3年ごとの調査で、好感度の最低は1972年、「良い」「どちらかといえば良い」を合わせて58.9%でした。また同じ調査で「自衛隊が存在する理由」を複数選択可で聞いてみますと、
災害派遣      81.9%
国の安全の保障   74.3%
国内の治安維持   52.8%
国際平和協力活動   42.1%
でした。多くの国民は、防衛出動も海外派遣も、災害派遣の延長線上で認識しているのではないでしょうか。
 災害派遣は自衛隊法によれば「天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため」「派遣」されるのであって、「出動」とは格が違います。派遣要請にあたってどの自治体からどの部隊に連絡するかは決まっています。派遣される側にとっては銃を持つか円匙(エンピ=スコップ)を持つかでは大変な違いですが、部隊移動の手順は同じです。ですから災害派遣は実動訓練にもなります。陸上自衛隊は各都道府県に駐屯しており、その地の「警備地誌」も作成しています。そして大規模災害対処では遠距離派遣もあります。
 2016年の熊本地震救援では、なんと北海道・真駒内の陸上自衛隊部隊も陸路で派遣されました。そのことが分かったのは、九州に向かう途中の東北自動車道・矢板北パーキンエリア(栃木県)入口附近でタンクローリーが横転事故を起こしたからです。幸い死傷者はありませんでしたが、積荷の軽油の一部が道路に流出しました。北海道の陸上自衛隊はかつて冷戦時代にはソ連軍の侵攻を阻止する想定で大部隊がいたのですが、いまやその必要もなくなってかなり縮減され、機動師団・機動旅団として有事には長距離出動する部隊になりました。真駒内から熊本までの災害派遣は、長距離機動訓練でもあったのです。
 いわゆる自衛隊の「国際貢献」ですが、国連PKOでも国際緊急援助活動でも、自衛隊が高い評価を受けているのは事実です。また国連の枠組みでない海外派兵でも、イラクの場合のような事実上の「多国籍軍」への参加もありました。国連PKOに関していえば、当初は内戦終結後に派遣される平和部隊でしたが、いまやPKOといえば内戦の一方に加担してでも住民を守る部隊に変質しています。そしてアフリカに関しては、かつて植民地宗主国であったヨーロッパ先進国は反発が強いため軍を送れません。米国もソマリアで手痛い打撃を受けてからはアフリカに部隊を送らなくなっています。失礼ながら後進国の出稼ぎのようなPKOになっています。自衛隊は米軍の名代としてPKOに参加しているのではないでしょうか。
 自衛隊のいちばんの役割、国を守る防衛出動について確認しておきます。安保法制による「武力行使の新3要件」はまず最初に、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とき自衛隊は出動するとなっていました。自国が攻撃されたた武力攻撃事態だけでなく、存立危機事態にも出動すると。その「事態」になったかどうかを認定する国家安全保障会議には自衛隊幹部も参加します。
 では肝心の外国軍が日本に侵攻してきたとき、自衛隊は国民を保護してくれるのか。有事法制のひとつ国民保護法の規定によれば、武力攻撃事態すなわち敵が攻めてきたとき、国は対処の「主要な役割を担い」ます。つまり敵と戦うのに忙しい。「住民の生命、財産の保護に関して……適切な役割を担う」のは地方自治体の役目です。そして指定公共機関、国民にも自衛隊への協力義務があります。
 分かりやすい例で言いますと、「物資収容のための公用令書の様式」が決まっています。有事に自衛隊は国民の私有財産を自由に使える、そのための書式です。「事態が急迫して文書によることができない場合は口頭でよい」との閣議決定もあります。従事命令のための公用令書の様式や、補償申請のための公用令書の様式などもすでにあります。従事命令の対象者は、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師、臨床検査師、診療放射線技師、建設業者、鉄道事業者、自動車運送事業者、船舶運航従事者、港湾運送事業者、航空運送事業者などに及びます。JRは別途、自衛隊法に協力規定があります。
 自衛隊の治安出動とはどういうものか。分かりやすく言えば、国民に向かって銃を向けて言うことを聞かせることです。「間接侵略」つまり敵に通じる者に対処するための出動とされ、総理大臣の命令による出動(隊法78条)の場合と、都道府県知事の総理に対する要請(81条)によるものがあります。実際に警察と共同での治安出動訓練が毎年行われており、有事の戦争反対デモなどは武装した自衛隊・警察によって蹴散らされるでしょう。
 本日のお話は日米同盟・安保条約のシステムについてはあまり触れておりませんが、安保条約によれば在日米軍基地を守るのはいまや自衛隊の仕事です。安保条約5条で、「日本の施政の下における領域」に対する武力攻撃には「共通の危険に対処」することになっていますが、日米防衛協力指針(ガイドライン)では、日本の領域での防衛作戦は自衛隊が「主体的に実施」します。在日米軍基地はもちろん日本国の領域です。米国の戦争に日本が巻き込まれて在日米軍基地が攻撃されたとき、米軍は外で戦うのに忙しく、米軍基地を守るのは自衛隊です。じっさいに朝鮮ミサイルの脅威が言われるとき、米軍横田基地に海上自衛隊のPAC3迎撃ミサイル部隊が展開しました。PAC3は半径20キロ以内でしか有効性がありませんが、その希少な武器を米軍防護のため使っているのです。また在日米軍基地のフェンスには必ず、無断で立ち入ると日本の法令で罰せられる、との掲示があります。

5.この自衛隊を憲法で認知して良いか

 日本国憲法は戦争を放棄した非武装の平和憲法ですから、もちろん憲法の規定上、日本は軍隊を持てません。では自衛隊はどういう存在なのか。
 自衛隊が発足したとき、国会で当時の防衛庁長官は憲法と自衛隊の関係について、次のように国会答弁をしました。1954年12月22日のことです。 「憲法第九条は、独立国としてわが国が自衛権を持つことを認めている。従って自衛隊のような自衛のための任務を有し、かつその目的のため必要相当な範囲の実力部隊を設けることは、何ら憲法に違反するものではない」。自衛のための必要最小限の「実力」は「戦力」に当たらない、という理屈です。
それが1990年10月18日になりますと、当時の防衛大臣は次のような国会答弁をします。 「自衛隊は、憲法上必要最小限を超える実力を保持し得ない等の厳しい制約を課せられております。通常の観念で考えられます軍隊ではありませんが、国際法上は軍隊として取り扱われておりまして、自衛隊は軍隊の構成員に該当いたします。」国内的には(憲法上)軍隊ではなく、国際的には(国際法上)軍隊なのだそうです。
 ではどの程度の「実力」なのか。いろいろな指標が考えられますが、防衛費の額は分かりやすい例でしょう。ストックホルム国際平和研究所の権威ある年鑑『SIPRI年鑑』によれば、2016年の防衛費は米国がダントツで6110億ドル、次いで中国2150億ドル、日本は8位です。ただし日本より上には核兵器保有国が並び、例外は4位のサウジアラビアだけです。サウジは軍事的に米国から自立した後、オイルマネーで近代的武器を買い込んでいるところです。そして核兵器保有は、とりわけ物入りです。米国の防衛費のうち213億ドルは核関係ですから。日本は世界でも有数の防衛費を使っている国だということです。

 では、自衛官の待遇はどのようなものでしょうか。
 同じ自衛官でも階級によって士(旧軍の兵にあたる)と曹(旧軍の下士官にあたる)以上では大きな違いがあります。士は陸上自衛隊なら2年、海上自衛隊・航空自衛隊なら3年の任期制、ただし再雇用可能です。曹以上は定年制で、定年は曹53、尉54、佐55、将60です。民間より早い定年ですが、再就職先の斡旋がありますし、上級になるほど天下り先が確保されます。自衛官になるには試験に合格しなければならず、また上級に上がるにも試験があります。ただし防衛大学校卒など幹部コースでは、士を経験せず最初から幹部候補生になります。
 俸給月額は、2等陸士で166,500円から。これは高卒すぐに入隊した場合で、年齢・勤続年数により異なります。1等陸曹で228,400円から、1等陸尉で277,400円から。期末手当は6・12月合わせ俸給の2.6ヶ月分です。他に手当として扶養手当、住居手当、単身赴任手当、地域手当等があり、職務により航空手当、乗組手当、航海手当、勤勉手当、死体処理手当、等もあります。独身の士はみな宿舎暮らし、結婚すると宿舎があり、制服があり給食がありますから、衣食住は保障されています。ただし宿舎は団地なみで、在日米軍住宅に比べて雲泥の差があります。
 近年問題になっているのは、エリートコースで将来が保障されているはずの防衛大学校卒業生の任官拒否・着任拒否です。2017年3月卒業生419人のうち47人が任官拒否、前年の倍でした。防衛大は学生が授業料を払うどころか准国家公務員として給与が払われるので、税金泥棒と罵倒されますが、それでも任官拒否をする人が多いのです。任官拒否をすれば卒業式には出られません。防衛大の卒業式といえば、「帽子投げ」が有名です。学生隊学生長(生徒会長)の合図で真上に投げ、拾わずに駆け足で講堂から出るのが伝統とか。これは米陸軍士官学校卒業式のマネですが、帽子を真上に高く投げるにはそれなりに練習が必要でしょう。
 自衛隊が専守防衛から外征軍に変質してくると、自衛官になりたい人が減るのではないか。また人口減少で適任者が減るのではないか。防衛省では当然、そのような心配もしておりまして、「自衛官募集対象人口」の統計をとっています。1990年代に1700万人いた18-26歳人口が、いまや1100万人になっている。自衛隊員は約24万人ですが、任期満了で退官する者があり中途退官がありますから、毎年1万4000人くらい入隊させないと定員が維持できません。現状ではまだ入隊希望者とくに幹部候補生は採用枠を超えて応募があり、公務員試験受験予備校に「自衛隊コース」のあるところもあります。地方によっては地場産業が衰退するなか他に安定した職があまりないことから、自衛隊入りを希望する若者も多いです。これからは米国なみに「経済的徴兵」が増えてくるのではないでしょうか。
 自衛隊員になるには、「服務の宣誓」をしなければなりません。自衛隊法施行規則第39条により、次のような文書に署名捺印します。 「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一 致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」
 この文章では、「我が国の平和と独立を守る」ために「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め」ることになっています。命をかけても我が国を守ると。日本を守るとは約束していますが、米国の戦争に協力するとは約束していません。そして「国民の負託」とはいいますが、米国の戦争に命を賭けろとは言っていない。
 かつて日本が再軍備したとき、警察予備隊から保安隊へ、そして自衛隊へとめまぐるしく名称・組織を変えました。保安隊から自衛隊に変わるときにあらためて「宣誓」に署名捺印をさせましたが、明らかに軍隊ではないかと宣誓を拒否して退官した人が7300人もありました。防衛大卒業生の任官拒否も、自衛隊の外征軍への変身拒否ととらえるべきではないでしょうか。
 やはり現行日本国憲法の下では、自衛隊は本物の軍隊にはなれないのです。それは9条に軍隊を持たないと書いてあるからだけではありません。
 日本国憲法には国家緊急権(戒厳令)の規定がありません。大規模災害や反乱、そして有事に国会を無視して内閣が国民に命令できる、その強制的実行部隊が軍です。2012年の自民党憲法改正草案は9条で「国防軍」をつくるとともに、98条、99条に「緊急事態条項」を設けることにしています。
 また日本国憲法76条は、「特別裁判所は、これを設置することができない」と決めています。軍法会議がない、ということです。旧軍では敵前逃亡は死刑でしたが、自衛隊法122条では隊員の服務違反の最高刑は7年以下の懲役、となっています。
 そして靖国神社はいまや国営ではなく、軍人恩給も勲章もありません。自衛隊員はほぼ強制的に生命保険に加入させられていますが、安心して「名誉の戦死」を遂げることができません。防衛省の敷地内には「メモリアルゾーン」があって、自衛隊殉職者慰霊碑があります。訓練中の事故などの殉職者は約1900人になります。毎年の慰霊祭には首相が出席しますが、むろん国を挙げての行事ではありません。
 自衛隊にこれまで戦死者が出ず、人を殺傷することもなかったのは、日本国憲法が平和憲法であることによって自衛隊が縛られてきたからだと思います。国会答弁や政府統一見解で、「専守防衛」「他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」「攻撃的兵器(ICBM、爆撃機、航空 など)は持たない」「外国軍との武力の一体化はしない」「文民統制を確保する」「非核三原則を守る」など、みな国民の運動と野党の追及で、政府に約束させてきたことでした。
 その約束が次々と踏みにじられている。だとしたら、平和主義の日本国憲法を守るためには、政府を代えるほかはないのではないでしょうか。
 自衛隊の実態をお話ししてきました。この自衛隊を憲法で認知して良いかが問題です。良くないなら、まず3000万署名を力に安倍政権による改憲策動を止めようではありませんか。そして市民・野党共闘の力で安保法制(戦争法)廃棄の政府をつくりましょう。